013:23時のニュース
*** 記憶喪失篇

 にわかに屯所の玄関辺りが騒がしくなり、土方は書類から顔を上げた。 もうじき見廻りに行っていた近藤が帰ってくる時間だから、隊士たちが迎いに出ているせいだろう。 立ち上がりかけた土方は、ふと思い直して机の下であぐらをかいた。
 それにしても今日の騒ぎは尋常ではない。ばたばたと慌しく駆ける足音も聞こえてくる。 ひとり首をかしげる土方の部屋の前でその足音は止まり、山崎の切羽詰った声がした。
「副長! 早く来てください局長が」
 皆まで聞く前に土方は立ち上がり、騒動の中心へと向かった。 隊士のひとりに抱きかかえられている血だらけの近藤の姿を認めて、どうせまた女に殴られたんだろうと無理やり口許に笑みを浮かべようとした。 その努力は無駄に終わったのだけれど。
 翌日、包帯だらけで布団の中で目覚めた近藤はすべての記憶を失っていた。 自分の名すら覚えていない彼の前で土方は我を忘れて叫びたくなった。


06.06.23