012:冬の匂い
かじかんだ両の手のひらを、ぎこちなく擦り合せる。
乾いた音を立てながら、しかしそれは幾度その行為を繰り返しても、一向に温まる気配はない。
土方は縁側に座り込み、足を無造作に外に放り投げていた。冷たい石の上に乗せられた、むき出しの足の甲がやけに白に映えた。
つま先だけが、赤い。赤と白――むしろ青白いといった方が的確かもしれない――のコントラストがいささか病人じみて見えた。
それをなんの色もない表情で見下ろしていた土方はやがて、その動作すら厭わしいといった体で、だらりと両腕を身体の脇に落とした。
そのままごろんと後ろに倒れ込む。薄い寝衣から伝わる板張りの冷たさに、思わず背を強張らせた。
しかしそれも最初のうち、慣れてしまえばなんてことはない。目を瞑って深呼吸を、ひとつ。肺に浸入する冷気が、ひどく新鮮に思えた。
――このまま眠ってしまおう。
途切れる意識の中、ふとそんな不埒なことを思いつく。手も足も相変わらず冷たいし、夜明け方の縁側は居眠りするにはあまりにも不適格な場所だったけれど。
「めんどう、くせェな」
微睡みかけた中、そう独りごちて、鷹揚に意識を飛ばしてしまおうとする。
しかしその静かな夢見心地を一掃してくれたのは、ひどく温かみのある、大きな手のひらだった。
「っ……、」
突然両手首をつかまれて、土方は目を見開いた。真上――そう、ちょうど顔を覗き込んできている体勢のため、思いのほか至近の距離に近藤の顔があった。
「こ……、ど、」
土方の動揺は音にならず、ずるずる、有無を言わさぬ力で近藤が手首を持って、引きずり始めた。もろ手をあげている状態で土方は、抵抗もままならず引きずられるしかなかった。
「近藤さ、ん!」
痛い、離せ、何すんだ。馬鹿力に手向かうことは無駄であるのはわかりきっているので、代わりに口が達者になる。
喚いたまま、部屋の内へと連れ戻される。強制連行をしてやられた土方は、布団の上で抵抗が解かれると同時にするりと上半身を起こし(その動きはいささかぎくしゃくとしていたけれど)、近藤の方へと向き直った。
「アンタ、なァ……」
視線の先、見やった近藤の顔に思いがけず苦渋の色が浮かんでいたので、土方の脳内から悪態の言は吹き飛んだ。
――続くのは、沈黙。
冷ややかな空気を破ったのは、近藤だった。
「布団の中なら、あったかいぞ」
厭に真面目な顔をして、変に当たり前のことを言う。
土方は思わず噴き出してしまいそうになって、思い出したように、かじかんだ手のひらをそっと、握り込む。
小さく頷いて、誘い込まれた布団の中、身体に馴染む匂いに包まれて、この凍えた手もじきに元の体温を取り戻すことだろう。もしくは、さらなる熱をもって――。
06.06.26