003:掌
 近藤の手のひらは、大きくて硬い。 竹刀だこができて、また潰れてを繰り返しているので、余計に堅硬なものへと変化していくのだ。
 それはもちろん、近藤に限ったことではない。土方だってそうだし、また刀を持つ者であればきっとそうなるのだろう。
 しかし土方にとって、近藤のそれは特別なもののように思えるのだ。
 節くれ立った指先に、一切の手入れもされていない四角い爪。 いたく不器用であるのに、時によってはひどく繊細に動く。この手が好きだと、土方はしみじみ思う。
「どうした、トシ」
 土方が近藤の手元をじっと見つめているので、近藤は不思議そうに首をかしげる。 おまえも食うかと邪気のない笑顔を浮かべ、作った握り飯を載せた皿を押しやってくる近藤に、土方はそうだなと頷いてみせた。
「こっちでいい」
「は」
 近藤の手のひらに付いた米粒をぺろりとなめ取ると、それはしょっぱくて、少し甘かった。


06.06.17