001:あなた
土方は今、テレビの前に釘付けになっていた。とあるテレビドラマが放映されているのだ。
どうやら新婚夫婦の朝の場面のようだ。
新妻が出勤する夫を玄関まで見送り、「あなた、いってらっしゃい」と満面の笑みで夫の頬にキスをした。
「ふうん、」
土方はバカバカしい、と鼻を鳴らした。こんなの初めだけだ、そのうち飽きるに決まってる。
鼻白んでいる土方の部屋を、ひょいと近藤が覗き込んだ。
「それじゃトシ、見廻り行って来るな」
「あ、」
しっかり隊服を着込んだ近藤を見て、土方の脳裏に先程のドラマのシーンが浮かんだ。
すくりと立ち上がり、近藤の元へと近づいていった。
「"あなた、いってらっしゃい"」
「はっ?」
目をひん剥く近藤に、土方はすかさず"いってらっしゃい"のキスをした。
06.06.17